国内でも数々の映画賞を受賞し、興行収入38.5憶円の大ヒットを記録した映画『告白』を手掛けた中島哲也監督の最新映画「来る」。
岡田准一、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡の実力派の俳優陣によるホラー作品です。
中島哲也監督作品ですので、監督の作家性が強く出たホラー映画になっています。
そのあたりを、良いととらえるか悪いととらえるかで判断が分かれる作品でしょう。
Contents
映画「来る」の原作概要
【原作】
澤村伊智
【脚本・監督】
中島哲也
【企画・プロデュース】
川村元気
【キャスト】
岡田准一、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡、青木崇高、柴田理恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、西川晃啓、松本康太、小澤慎一朗
映画「来る」の主要なキャラクターとキャスト
(引用:https://www.cinematoday.jp/news/N0104354)
野崎和浩(岡田准一)
オカルトを中心に、エロ・ゴシップなどお金になるものならば、何でも書くフリーライター。
(引用:https://www.cinematoday.jp/news/N0104456)
比嘉真琴(小松奈々)
霊能力のあるキャバ嬢で、野崎とは深い仲で、強い信頼関係がある。
(引用:(C)モデルプレス)
田原秀樹(妻夫木聡)
香奈の夫。世間体を気にして、実が伴わないタイプのサラリーマン。自称イクメンで、イクメンパパのブログにはまっている。
(引用:https://www.cinematoday.jp/news/N0105451)
田原香奈(黒木華)
秀樹の妻。娘の知紗の育児やマイペースで家事や育児を手伝わない秀樹にイライラを募らせる。育児ノイローゼ気味。
(引用:https://movie.walkerplus.com/news/article/170885/)
比嘉琴子(松たか子)
真琴の姉。強力な力を持つ霊能力者で、日本の中枢にも影響力があり、除霊を試みる。
原作情報
(https://www.kadokawa.co.jp/product/321506000130/)
澤村伊智による日本のホラー小説。
2015年に「澤村電磁」名義『ぼぎわん』のタイトルで、全選考委員が絶賛しての第22回日本ホラー小説大賞受賞。
後に『ぼぎわんが、来る』に改題して10月30日、澤村の小説家デビュー作として刊行されました。
原作者紹介
澤村伊智(さわむら・いち)
1979年生まれ、大阪府出身。
幼少期より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂作品を敬愛する。
2015年、「ぼぎわん」で第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉を受賞。
巧妙な語り口と物語構成を評価され、新たなホラーブームを巻き起こす旗手として期待されている。
映画「来る」のあらすじ(ネタバレ有り)
東京の製菓メーカーに勤務する田原秀樹(妻夫木聡)は、妻・香奈(黒木華)との間に娘・知紗が生まれる。
秀樹は、娘・知紗の面倒をよく見る「イクメンパパ」として、自身の子育て生活を配信しているブログも人気です。
そんな彼には、忘れることの出来ない不吉な過去がありました。
「それは幼馴染だった少女から言われた“それ”という、恐ろしい存在が自分を連れ去り来る。そして、やがて“それ”は秀樹も連れ去りにやってくる」という記憶。
やがて、秀樹の周りで奇妙な出来事が連続して起こり続けます。
ある日、秀樹の会社へ「娘・知紗の件で」と不審な人物が来訪する。
対応した部下に呼ばれて、エントランスに行くとそこには誰もいません。
その対応した部下は、突然出血し、入院。やがて死に至ります。
また、ある日家に帰ってきた秀樹は、荒れた部屋と安産祈願や家内安全にと送られてきたお守りがすべて切り刻まれてるのを発見します。
流石に気味が悪くなった秀樹は、オカルト雑誌に寄稿しているフリーライター・野崎昆(岡田准一)に助けを求める。
秀樹から話を聞いた昆は、霊媒師をしているキャバ嬢の比嘉真琴(小松菜奈)を紹介。
しかし、“それ”はより強く秀樹たちに迫ってきました。
そんな秀樹に真琴の姉で、強力な能力を持つ霊媒師の琴子から連絡。
琴子に紹介された実力のある霊能者と話をしていると、突然、“それ”が襲い掛かり霊能者の片腕を引きちぎります。
香奈と娘・知紗を守るために家に戻ります。
そこに琴子からの電話、香奈と知紗を連れて家から出るように告げられます。
そして琴子に秀樹は“それ”を呼びつける手伝いをするように言われ、刃物や鏡を封印して襲来に備える。
怯える秀樹に携帯電話越しに琴子の声が「ここからは自分の仕事です」と言う。
しかし、次の瞬間、琴子から固定電話に電話がかかってきます。
驚く秀樹に、携帯電話の向こうの琴子は、“それ”によるなりすましだと伝える。
その後、秀樹はどうなってしまうのか…
映画「来る」の感想
ホラー映画好きに、映画「来る」をおすすめしません
確かにホラー映画が好きで、ホラー映画を見に行こうと思っている方には、この映画はおすすめしません。
なぜ、おすすめしない理由かをお伝えします。
この映画は、ホラーというテーマで中島哲也監督が撮った映画だからです。
つまり、ホラーの要素の中に、中島哲也監督の強い作家性が出ているということです。
中島哲也監督の作家性とは、人間が誰しも抱えている恐ろしさの表現であり、その表現は過去の「告白」「渇き」に続き今回の映画「来る」でも表現されています。
恐ろしさというのは、良い人として振舞っている人が、裏では憎しみや嫉妬などの汚い感情から恐ろしい行動するということ。
そして人間はみんな、そのような闇や異常性を持っていながら、集団でいることによって、その行動に自覚的でないという恐ろしさでもあります。
最近で言うと、日大アメフト部のタックル問題も、人間の持った恐ろしさが表面化した事件と言えるでしょう。
「相手選手をどうにかしてケガさせろ!」という明らかに異常な監督の指示を、フットボール部という集団の中で誰も否定したり拒否したりできず、指示に従うしかなかったというのも、この自覚的でない人間の恐ろしさを表していると言えるでしょう。
そして今回の映画「来る」では、”あれ(ぼきわん)の恐ろしさ”と”人間の恐ろしさ”が大きなテーマになっています。
ホラーの要素は、”あれ(ぼきわん)の恐ろしさ”で表現されていますが、あくまでテーマの半分なので、そこまで深く表現されていません。
本当に恐ろしいのは、「あれ」か「人間」か
捨てられた子供とは、かつて「子捨て」「間引き」「口減らし」と呼ばれて、殺された子供のこと。
人間たちは、自分たちの都合で子供を殺し、それを”あれ(ぼぎわん)”がおやまに連れ去ったとして自分たちの行為を正当化してきました。
これが、映画「来る」での”人間の恐ろしさ”の部分です。
この”人間の集団心理の恐ろしさ”を、非常に上手く描き出しています。
どろどろとした”人間の集団心理の恐ろしさ”を生々しくも、どこまでも美しい映像で描くことで、後味が悪くなっていません。
中島哲也監督の特徴的に白が使われた美しい映像は、今回も広く使われていますので、彼の映像ファンとしては満足です。
音楽も要所要所に効果的に使われており、スピード感のあるシーンと抑えるシーンの緩急が上手く付けられていて、心地よいテンポで物語が進んでいきます。
中島哲也監督は、音楽チョイスや使い方も上手ですよね。
今回の「来る」は、「告白」「渇き」と続いた”人間の恐ろしさ”を描いた作品の集大成的な作品。
そのため、映像も既視感があり、強い個性や強いこだわりも少し影を潜めていたかなとも感じたところが残念でした。
全体的に見れば、個人的に非常に楽しく見ることできた作品です。
ただ万人受けする作品ではないので、彼の過去の作品が好きではない方には、おすすめできないかも。
過去の作品である「告白」「渇き」を一度見てみて、「来る」を見るのか決めるのも一つの方法です。